「熊延鉄道」 田尻弘行著

 熊延鉄道(熊本バスの前身)は熊本市の南熊本駅と下益城郡砥用町を結んでいた私鉄。一九一二年の計画申請から六四年の廃止までを丹念に追跡。これまで知られていなかった写真や図を発掘するなど貴重な資料となっている。

 蒸気機関車やディーゼルカー、南熊本(熊本市)や浅井駅(甲佐町)のラッシュ風景、上島駅(嘉島町)の線路撤去などの写真、さらに車両竣工(しゅんこう)図などは初公開。

 また、甲佐〜水越(御船町)〜浜町(矢部町)馬見原(蘇陽町)、砥用〜浜町の二本の計画線、熊本市内の水前寺駅から三菱重工(現在の県健康センター一帯)までの専用線など、これまで断片的にしか知られていなかった歴史に光を当てた。

 著者は熊本市出身で、神奈川県川崎市在住の鉄道研究家。全国の廃止路線をシリーズで刊行しているRMライブラリーの第42巻。既刊に「熊本電気鉄道」(第25巻)がある。(ネコ・パブリッシング・一〇五〇円)

熊本日日新聞2002年12月29日朝刊
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