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個別分野 酸性雨

研究概要(パンフレットから)

東アジア地域には現在めざましい経済発展を続けている国が多く、そこから放出される大気汚染物質は国境を越え、酸性雨として我が国にも飛来します。国立環境研究所では地上の測定局や航空機を用い、アジア大陸から輸送されてくる大気汚染物質の挙動(地域分布や季節的な変化など)や、雨・雪に取り込まれた酸性物質の観測と酸性雨の影響に関する研究を続けています。

日中共同の航空機による大気汚染観測

日本とアジア大陸間の海洋上空の観測に加え、世界初の試みとなる中国国内大気汚染物質の日中共同航空機観測を行いました。その結果中国国内の汚染の状況とそこから海上を経由して長距離に輸送される間の汚染物質の変遷が明らかになりました(実験に使用した航空機 (写真:1))。

(写真:1)中国における航空機観測に用いられたYUN-5型単発複葉機
(写真:1)中国における航空機観測に用いられたYUN-5型単発複葉機

渤海湾上空で行われた航空機観測で捕集されたエアロゾル(粒子状大気汚染物質)に含まれる化学成分を調べると、酸性成分と塩基性成分がほとんど1:1の濃度比で存在しています(グラフ:1)。酸性物質の大規模発生源の近傍では、酸性物質を中和する成分であるアンモニアも大量に放出されています。硫酸イオン濃度とアンモニアイオン濃度は1:1に対応し、硫酸がアンモニアで中和されていることがわかります(一部フィルター上での中和も考えられます)。このような状況は福江島〜韓国済州島周辺の東シナ海上空でも観測されています。ところが沖縄に至ると状況は全く違っています。沖縄で採取された雨に含まれるイオン成分を調べると、特に冬季には硫酸イオンがアンモニアイオンの2倍以上も含まれていることが報告されています。私たちが沖縄でエアロゾルの化学成分を調べたところ、やはり硫酸成分がアンモニア成分より過剰に含まれていることがわかりました。これは大陸で大量に放出された二酸化硫黄(SO2)とアンモニアが長距離に輸送されていく過程で、SO2が酸化されて硫酸になる一方、アンモニアは海面に沈着して除かれていくため、大陸から離れるに従い硫酸成分が過剰になってくるものと考えられます。

(グラフ:1)航空機で捕集された化学成分濃度グラフ
(グラフ:1)ハイボリュウムサンプラーによって航空機上で捕集されたエアロゾルに含まれる化学成分濃度(赤色系は酸性成分、青色系は塩基性成分を示す)

一方、大連から青島にかけて渤海湾および山東半島上空の観測でオゾンとNOxの変化を調べると、渤海湾上空ではオゾンとNOxの間にきれいな正の相関が見られるのに対して、山東半島上空では次第にこの相関が悪くなり、青島近傍では逆の相関(NOx濃度が高いほうどオゾン濃度が低くなる)が見られます。このようなオゾンとNOxの逆相関は大規模発生源近傍の特徴です。また、SO2/NOxの比を、1995年および2000年の発生源データと比較すると、観測値は1995年の計算値よりかなり小さく、2000年の計算値にかなり近いことがわかりました。中国において、発生源対策によるSO2放出の減少と、車の増加によるNOx放出の増加が進んでいることを示唆しているものと考えられます。

越境大気汚染物質の定量化のための解析

越境大気汚染の定量化のために、シミュレーションモデルを使って、東アジアにおける既存のモデル研究よりも詳細なソース・リセプター解析(発生・沈着マトリックス)を行いました。地域気象モデルを用いて1995年の年間気象データを作成し、その結果をもとに物質輸送モデルを使って東アジア域における硫黄酸化物の発生沈着マトリックスを作成しました。春季には、中国の大都市や華中付近から排出された硫黄酸化物が大量に日本列島に運ばれるため、日本への沈着量が非常に多くなる。 一方、夏季(梅雨を含む)においては自国、特に九州の火山帯の影響で、火山からの寄与が高くなっています。冬季においては中国側からの北風が強く、春季と同様中国からの寄与が高くなっています。年間を通して見ると日本領域では硫黄酸化物は1150Gg.s沈着(乾性+湿性)していることが明らかとなりました。 また、(グラフ:2)に示したように年平均で49%が中国起源であり、続いて自国(21%)、火山(13%)、朝鮮(12%)の寄与が大きいと見積もられました。

(グラフ:2)硫黄酸化物の発生沈着量年平均寄与率
(グラフ:2)硫黄酸化物の発生沈着量年平均寄与率

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