続報
運慶作の仏像から仏舎利を発見
〜東京文化財研究所と県立金沢文庫の共同調査で〜
蓮実X線透過写真
蓮実舎利容器(X線透過写真) 中心部の白い円が仏舎利
提供:独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
蓮実舎利容器の画像
蓮実舎利容器 蓮の実の一端が削り取られ木栓が施される
運慶作大威徳明王坐像の画像
運慶作 大威徳明王坐像 建保4年(1216)
称名寺光明院所蔵 神奈川県立金沢文庫保管

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 県立金沢文庫において保管する建保4年(1216)仏師運慶による製作が判明した大威徳明王坐像(だいいとくみょうおうざぞう/称名寺光明院所蔵)の像内納入品について、独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所と県立金沢文庫で共同調査をしたところ、蓮の実(はすのみ)に仏舎利が込められていることが判明しました。

○運慶作・大威徳明王坐像
 県立金沢文庫において保管する称名寺光明院所蔵の大威徳明王坐像は、その像内に納入された文書から、建保4年(1216)に源実朝の養育係・大弐局の発願により、仏師運慶により造像されたことが判明し、話題となりました。

○納入品の諸相 −珍しい香料類と蓮の実(種)−
 像の内部には、和紙に包まれた状態で、年代決定の決め手となった納入文書以外に、東南アジア原産で輸入品の丁子(クローブ)や、抹香(白檀を粉末にしたもの)、蓮の実(種)がありました。このうち蓮の実については、約1.7cmという小さな物にもかかわらず、一端が削り取られ、ヒノキ材の栓(径約3mm)がしてあり、その内部に何らかの納入品があると認められました。

○X線透過写真撮影により仏舎利を確認
 蓮の実の内部を確認するため、独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所と県立金沢文庫は、X線透過写真撮影を行いました。その結果、蓮の実の中に径1〜2mm程度の円形不透過物がみられ、これは仏像に魂を込めるために納入された仏舎利とみられることが判明しました。仏舎利を仏像に納めることは、当時は重要な造仏儀礼の一つとされます。金沢文庫には鎌倉時代初期に運慶が、弘法大師空海による発願の大威徳明王坐像を含む京都・教王護国寺(東寺)の五大明王像(現存・国宝)を修理したとき、弘法大師所縁の仏舎利を次々と取り出したという記録があり、この仏舎利については近年の東寺の仏像修理でもX線透過撮影で確認され、新聞等で報道され話題となりました。

 なお金沢文庫では、開催中の特別展「金沢文庫の仏像」(会期:4月19日〜6月10日)において、修理の完成したこの仏像と納入品を初公開しています。