■東方の夜明け
当日は雨天の中での開催となりましたが、多くの方に御来場頂き、誠にありがとうございました。
会場となった教室の都合上、予め入場数を制限しなければならなかったことは大変残念に思っております。
この度、トークショーの内容をまとめましたので、当日会場にいらっしゃった方も、そうでなかった方も、
どうかご覧ください。
基本的に、「−」以下は司会の発言、ZUN氏の発言は太字といたしました。
(読みやすさを考慮して、一部ZUN氏の許可を得て編集しております。御了承ください)
ZUN氏、開演と同時にかかった曲をBGMとして入場。 (入場にあたって、ZUN氏に入場曲を作曲していただきました。
これは、童祭 〜 Innocent Treasuresとして音楽CD・夢違科学世紀 〜 Changeability of Strange Dream.に収録されております。)
ZUN:
今日このために作ってきた曲だから。一瞬しか流れなかったけど(笑)
東方永夜抄
−本日のイベントですが、ZUNさんに、東方projectのこと、ゲーム製作のこと、音楽のこと、
また、プライベートのことについて語っていただこうというイベントです。
まず、ご存知の方がほとんどだと思いますが、ZUNさんの経歴について簡単に説明させていただきます。
1995年に「東方靈異伝 〜 Highly Responsive to Prayers」を開発
その後も続々と開発を続け、2002年に上海アリス幻樂団を立ち上げ。
その年のコミックマーケットにて「東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil.」をリリース。
2003年には「東方妖々夢 〜 Perfect Cherry Blossom.」、2004年には「東方永夜抄 〜 Imperishable Night.」を発売と、
非常にハイペースな開発をされています。
また、音楽CD「蓬莱人形 〜 Dolls in Psuedo Paradise.」「蓮台野夜行 〜 Ghostly Field Club.」も頒布され、
この2作は現在でも入手可能です。
ではまず、最新作である「東方永夜抄」についてお話を伺おうかと思いますが、
最初に、「永夜抄」はどのようなテーマで開発されたのでしょうか?
ZUN:
まぁ、いきなりまじめな質問で面食らうんだけど(笑)
ここにいる人は皆遊んでくれてると思うんだけど
−じゃあ、聞いてみましょうか。「永夜抄」を遊んだ方〜
(会場全員挙手)
ZUN:
すばらしい(笑)ありがとうございます。テーマは、遊べば分かると思うけど『竹取物語』なんですよね。
最初からそれはやりたくて、やってみたら結果としてよく分からない感じになってしまったんだけど。
まあ、東方自体もよくわからないゲームだからね。あれでいいのかな〜って。
結構ゲームは好きで作ってるんで、元々竹取物語は好きだったんだけど、それよりSTGの方が好きですから(笑)
好きだから好きなものを作ってるだけであって。
……そんな話をしても面白くないので、あんまり真面目な話はやめましょう(笑)
『永夜抄』自体は竹取物語がテーマです。
―では、ここでイベント開催時に質問を募集したので、その質問に答えていただきましょう。
まず、「永夜抄」に関してですが、
−毎日超へたれながらも楽しく東方シリーズをプレイさせていただいております。
1年に1回という驚異的な開発をされていますが、これは1年のスケジュールを決めているのでしょうか?
例えば何月〜何月は音楽、と言う風に作るのか、それとも全作業同時進行なのでしょうか?
ZUN:
そういう質問は、もう答えが決まっていそうな感じだけど(笑)
まぁスケジュールの締めは決まっているよね。一作品の完成は外的要因で決まります。
どうしても夏コミに出すって決めちゃったら出さないと。
それは、ゲームに明確な完成が存在していないからですね。
ゲームとしての完成は、その一作品の完成を踏まえて次に託すのですよ。
大体、夏コミまでには完成するような凄い細かいスケジュールがあります。
音楽や絵はバラバラに作っているけど、それでもステージ単位で作っています。
1月中に1面とか、2月中に2面とか。そんな感じで。7月マスターアップの時には終わるように。
1面は簡単に出来るけど、最後は難しかったりする。
−ハイペースな開発ペースだと思いますが?
ZUN:
ハイペースなのかな?
1年間あれば何でもできる。自転車で日本1周もできるし。
何か様々なものを犠牲にしてやりたいことをやれる、このストイックな感じが重要になってくると思う。
と言うか、1年も同じ事続ければ大体の人は何でもできると思うけど。
−創作意欲の源泉は何ですか?
ZUN:
まぁ、好きだからだねえ。
努力してまで意欲を湧かせたりする事はなく、本質的には自分のやりたいことをやっている。
「ゲームを創って発表したりする」と決めておいてそれでいて最後まで保たないという事は、
発表したいだけでゲームを創るのは好きじゃないって事になる。
創っている事が好きだったら、そもそも苦にならない。勉強だって好んでする。
僕の場合は好きだから精神的には苦じゃない・・・いや、苦かも(笑) だめじゃん(爆笑)
−「東方永夜抄」の音楽ではエレキギターの比率が増えたような気がするけどそれは意識的にですか?
ZUN:
そんなパーツで見てもしょうがないんで。
僕は基本的には作曲していても、「今回はこうしよう」といった自由度が利かない。
最初から明確なビジョンがある訳でもなく、曲を創って「お、いいね」と思ったら使っているので、
もしかしたら次はクラシカルなものになるかもしれないし、お経のようなものになるかもしれない。
たまたま、そこに山があるから、といった風に(笑)
でもまぁ「永夜抄」は、「妖々夢」がしっとりしすぎてる感じがあったし、
急いでて夜だから激しく行こうかなというのは意識していたかも。
トランペットの音が好き
−好きだったり、意識的に使っている音はありますか?
ZUN:
気づいてる人もいるかもしれないけど、(いま使っている音源の)甲高いトランペットの安っぽい音が大好き。
あんなにトランペットは震えないだろうと(笑
使いやすい楽器って言うのはある。別に自分で弾いてるわけじゃないけど。
中には凄く使いやすい音と使いにくい音があるよね。
ピアノなんかは当たり前のように使いやすいし、例えば飛行機の着陸音なんかは使いにくいよね(笑)、当然だけど。
他にはアコースティックなギターとかストリングとかは、演奏技術がよくないと安い感じになってしまう。
例え上手く聞こえたとしても、自分で弾いた訳ではないのでこういう音は倦厭しがちなのかも知れない。
僕の曲は基本的にゲームミュージックなので、ゲームの為だけに存在している筈なんですけどね。
−音楽関係の習い事というのは具体的にこんな楽器をやっていた、というのはあるのでしょうか?
ZUN:
習っていた、というより吹奏楽を中学からやってた。だからマイトランペットは持っている(笑)
小学校のときは誕生日にエレクトーンを買ってもらって、演奏する真似事をしたりするのが好きだった。
−親御さんがそういうのが好きだったとか?
ZUN:
それはどうだろう?親の趣味はあんまり関係ないかも。たまたまだね。世の中何が起こるかわからないから。
−そうですね。そこでエレクトーン買ってもらってなかったら今どうなってたか分かりませんもんね?(笑)
ZUN:
どうなってたかわからない……って、まるでそれが全てみたいな言い方(笑)
−作曲を始められたのはいつごろから?
ZUN:
作曲は……中学のときに学校の先生が面白くて作曲の授業ってのがあった。普通あるのかな?
−あまりいないと思いますけど。じゃあ、会場の皆さんに聞いてみましょうか。中学のとき作曲の授業があった方?
(3,4人挙手)
ZUN:
まぁ、普通無いよね(笑)それで、楽譜書いて、先生に提出して、それを先生が弾いてクラスの皆が評価する、ってのがあって
その前には作曲ちょっとやってたんで、呪われそうな変な曲とか(笑)
そのときは自慢じゃないけど、いや、自慢だけど、ちゃんと1位とったよ(笑)
−ZUNさんは音楽を作る際に妄想をするそうですが、具体的にどんな妄想をするのですか?皆さん気になるところだと思うのですが?
ZUN:
それは本当に選んだ質問なのかな(笑)?(「ホントに選んだんですよ」と弁解する司会)
まぁ、妄想はするよ。多分。皆してると思うんだけど。
曲ってイメージがないと書けないでしょう?
理論さえあれば技術的には書けるんだろうけど……僕はそこまでテクニックもないし。
それに技術だけで作ると、作曲も楽しくないし。明るい場面はここからこういう風すれば明るい曲になる……とか。
やっぱり妄想して、思うがままに創ってみる。素人臭いっちゃそうなんだけど。
ゲームミュージックだとそういうことしやすいんですよ。
先に曲が流れている場面がある訳だから、その場面を妄想しやすい。
例えばボスキャラだったらまず、そのボスの設定を考える。その時点で妄想なんだけど。
その後に絵を描いてみる。そしたらもうほとんど妄想しかないんで「こういう能力持ってるならこうい
う弾幕使うんだろうな〜」といった感じに曲を創ってみたり。
それで曲作ってみて「やりすぎたかな」って感じたら、またやり直ししたりしながら。
−キャラ別に方針の違いとかはあったりするのですか?
ZUN:
キャラが異なればだいぶ異なるよね。
まぁ、でも東方自体出せるキャラが決まってるからねぇ。出て来られないキャラクターってのがいるから。
例えば「あの葉っぱが落ちたらこの命が終わるんだ〜」っていうような病弱な女の子とか、
不可解なことを全く信じない現代風な女の子とかは弾幕に合わないからねぇ。
出しても良いけど……やっぱり合わないよね。「親の仇〜」とか言いながら弾幕撃ってくるとか(笑)
親の仇ならもっと本格的に殺せば良いし、見せ技とかやる必要もないし。
東方の場合は結局、弾幕を見せ技にしてますし。
最初の話に戻るけど、キャラ別に方針の違いは無いです。
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