ひょうご防災新聞  Disaster file

45.気象台の仕事

(2007/02/18)
防災情報発信の拠点/県内8区分 注意報と警報

 防災に役立つさまざまな情報を発表する気象台。全国には札幌、仙台、東京、大阪、福岡の五カ所に広域的エリアを管轄する「管区気象台」、沖縄に同等の「沖縄気象台」がある。各都道府県には「地方気象台」がある。

 兵庫県を担当するのは、神戸市中央区脇浜海岸通一の神戸海洋気象台。他の地方気象台と異なり、「海洋」の名称がついているのは、海上の気象観測なども担っているためだ。海洋気象台は神戸、函館(北海道)、舞鶴(京都府)、長崎の全国四カ所だけで、いずれも観測船を持つ。

 兵庫県内には海洋気象台以外に、豊岡市に豊岡測候所、神戸空港に関西航空地方気象台(関西空港)の出張所がある。三カ所合わせて約百人の職員がいる。かつては姫路、洲本にも測候所があったが、二〇〇三年に廃止された。

 職員がいる三カ所を含め、地域気象観測システム(アメダス)で降水量や気温などを観測している地点は、県内に二十八カ所ある。観測項目は場所ごとに異なる。

 地震の揺れの強さを測る震度計(気象庁管理分)は、県内に二十七カ所。自治体などが設置している約九十カ所と合わせ、オンラインで情報を集めている。潮位を自動計測する検潮所は神戸と洲本に置き、県が所有する姫路検潮所のデータも収集している。

 「防災に関する情報は、法律で決められた県や国の機関、NHKなどに送るほか、別のシステムで市町にも提供しています」と神戸海洋気象台の草川和康・防災気象官。一般の人も、同気象台や気象庁のホームページで詳細な情報を入手できる。

 気象台が発表する情報で防災上、特に重要なのが注意報や警報だ。気象の注意報は十六種類、警報は七種類あり、神戸海洋気象台は県内を八区域に分けて発表している。

 注意報、警報の発表基準は、過去の災害状況などから地域で異なる。大雨警報の場合、阪神は「雨量が一時間五〇ミリ以上、三時間一〇〇ミリ以上、二十四時間一七〇ミリ以上」のいずれかが基準だが、北播丹波は「一時間五〇ミリ以上、三時間一一〇ミリ以上、二十四時間二〇〇ミリ以上」だ。

 数年に一度しかない大雨を観測した場合(県南部で一時間一〇〇ミリ以上、北部で同八〇ミリ以上)は、「記録的短時間大雨情報」を発表する。

 一方、津波予報(津波注意報、警報)は、気象庁か管区気象台しか発表できない。

 兵庫県の場合、津波予報は「県北部」「県瀬戸内海沿岸」「淡路島南部」の三区分で発表される。

 近畿、中国、四国を管轄する大阪管区気象台(大阪市中央区)は、気象庁が地震などで被災した場合に業務を代行できる体制を整え、西日本の拠点という役割も持つ。

【Q】台風が「大型」かどうかは、どんな基準で決めているのか?

【A】気象庁が台風の「大きさ」と「強さ」を表す目安を決めている。「大きさ」に関しては、「大型」と「超大型」がある。強風域(風速が毎秒15メートル以上の範囲)の半径が500キロメートル以上で800キロメートル未満の場合を「大型」といい、強風域の半径が800キロメートル以上の場合を「超大型」という。

 一方、「強さ」は、最大風速で判断する。最大風速が毎秒33メートル以上44メートル未満は「強い」、44メートル以上54メートル未満は「非常に強い」、54メートル以上は「猛烈な」と表現される。

 台風の情報は、大きさと強さを組み合わせ、「大型で強い台風」というように表される。

(記事は社会部の磯辺康子、姫路支社の松本茂祥が担当しました。)


災害の記憶  宍粟市山崎町清野 山下房子さん(56)

山崎断層帯の地震  強い揺れで断層の存在認識

暮坂峠断層を震源とするM5・6の地震で崩れ落ちた石垣=1984年5月30日、姫路市林田町

 裏山の方向から、山鳴りとも地鳴りともつかない「ゴーッ」といううなりがわき上がった。

 一九八四年五月三十日午前九時三十九分、山崎断層帯の暮坂峠断層(姫路市安富町三坂)を震源とするマグニチュード(M)5・6の地震が起きた。

 「ドドドッ」。断層の北約十二キロにある自宅の台所で、約十秒間の強い揺れに襲われた。そして揺れ戻し。恐怖で体が棒立ちになった。このときまで山崎断層を知らず、断層の存在を強く認識させられた地震だった。

 幸い、周辺に被害はなかったが、新聞は「姫路で震度4」と報じていた。新幹線は緊急停車。相生、たつの市などで瓦の落下や塀の倒壊があったことを伝えていた。

 山崎町の市街地で役場のガラスが割れた。山崎小学校では児童の悲鳴が上がり、屋外に避難した。断層近くで砂煙が上がったのを目撃した住民もいた。宍粟防災センターにインストラクターとして勤務し市民の防災学習をお手伝いする傍ら、地元の体験者から聞いた当時の話だ。

 同じ地震でなぜ被害の出方が違うのか。理由は地盤。軟弱な地域ほど揺れやすい。学んだことはほかにもある。山崎断層帯では八六八年の播磨国地震でM7級の大地震があった。最近もM5級が四回、十一―十三年間隔で発生しており、いつ大地震が起きてもおかしくないことも知った。

 来館者からも教えてもらうことは多い。「震度7」の体験ができる起震装置が施設内にあるが、阪神・淡路大震災の被災者が「本当の揺れはこんなものじゃない」とおっしゃった。体験を拒む方もあった。こうした生の声は、案内時に必ず紹介している。

 地震時にどれだけ平常心で行動できるかが、けがなどの被害を少なくする鍵。それには体験が役立つ。机の下に潜る訓練を一度経験すれば、言われなくてもできるようになる。一人でも多くの人にセンターに来てもらい、地震体験を通じて防災意識を高めてほしい。

 
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