ひょうご防災新聞  Disaster file U

78.航空機による救援

(2008/07/21)
駐機場確保など課題
 岩手・宮城内陸地震では6月14日の発生当日、102機の航空機が救援に出動、孤立者救助などに貢献した。しかし、将来、発生が予測される南海地震などでも活躍するには課題が残る。

 百二機の航空機は自衛隊機や各自治体の消防防災ヘリ、海上保安庁のヘリなど。当日だけで孤立した人を四百人以上救助し、被害状況の把握にも威力を発揮した。

 今回の被害は岩手、宮城両県境付近に集中した。しかし、将来の南海地震は東海、東南海地震と同時に発生する可能性もあり、そうなれば関東から九州北部までの沿岸部で被害が予想される。陸海空の自衛隊は航空機約七十機が災害即応体制を取っており、消防防災ヘリも全国に七十一機あるが、地震直後にすべての救援要請に応じるのは難しいとみられる。

 さらに、災害時に孤立する恐れがある中山間集落で、ヘリの駐機スペース、外部への連絡手段となる衛星携帯電話などの準備が進んでいない。空港での燃料確保や空域の安全性については今回も問題となった。最大限の活用に向け、課題は多い。

(石崎勝伸)


「守ろう」わがまち

三ツ星ベルト 近隣に出動、復興支援も

「たなばたまつり」で交流する三ツ星ベルト社員と住民ら=13日、神戸市長田区浜添通4(撮影・川口洋光)

 住宅と工場が近接する神戸市長田区・真野地区。産業用ベルトを製造する「三ツ星ベルト」は長年、工場火災に備えた自衛消防隊が近隣の火事にも出動し、自社の体育館で社員が小学生らに剣道を教えてきた。

 住民との信頼関係は、一九九五年の阪神・淡路大震災で生かされた。本社は九二年に同市中央区に移転していたが、真野地区には工場と研究所があった。自衛消防隊は近くで起きた火災を工場内の井戸の水で消し止めた。当直の保安責任者は体育館を被災者の避難場所として開放し、約四百人を迎え入れた。

 真野地区は震災後、人口減による衰退にあえいだ。住民から「復興に力を貸して」との要請を受け、二〇〇〇年、本社を同地区に戻した。翌年には社内のボランティア団体「ふれあい協議会」を結成。今月十三日にあった「たなばたまつり」など、住民参加の催しを年間を通し開く。

 同協議会会長の保井剛太郎・総務部長兼神戸事業所長は「社員には企業も地域社会の一員だと認識してほしい。社員が少ない夜間や休日の災害なら、住民に助けてもらうこともあるだろう。いざというときに役に立つのは顔の見える関係だ」と実感を込めて話す。

(石崎勝伸)

【Q】記録的短時間大雨情報とは

【A】数年に一度しか降らないような大雨が観測された場合に気象台が出す情報。大雨警報が出ている最中、より一層の警戒を呼び掛ける目的で発表する。  発表基準は地域ごとに異なり、兵庫県南部では1時間雨量が100ミリ以上、北部では80ミリ以上とされている。大雨が観測された市町村や観測所名、時間、雨量が発表される。1982年の長崎大水害を受け、気象庁が83年10月に導入した。

 
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