地才地創

 神戸新聞社は1年後の2008年2月11日、創刊110年を迎えました。地域とともに歩んできた兵庫県紙として、市町合併で29市12町となった兵庫の活力創出に向け、より力を注いでいきます。この特集は、創刊110周年記念事業として取り組んでいる、地域の才能を掘り起こし、地域の元気を創造する“地才地創(ちさいちそう)シリーズ”プロジェクトの第1号です。

春物の鮮やかな靴がずらり並ぶ。「神戸発のものづくりの底力を見せよう」。河野忠友社長(中央)の呼び掛けにデザイナーや職人たちがうなずく=神戸市長田区大道通5、カワノ本社

 いい企業ほど、自らが育ってきた街にこだわる。そんな実感がある。

 不況に苦しんだこの10年。中国に工場を造ろう、東京へ本社を移そうという動きが加速した。その中で、ぐっと踏みとどまった企業が、確かな存在感を見せ始めている。

 神戸・長田のケミカルシューズ業界最大手のカワノ。その戦略はシンプルだ。「本当に履き心地のいい靴は、ノウハウを知り尽くした神戸でしか作れない」。昨年11月に社長に就任した河野忠友さん(40)は言う。

 靴作りが好きでたまらない若きデザイナーがアイデアを練る。製作では、重要な部分は手だれの職人がきっちりこなす。国内で手間暇かけるという「弱み」は、千変万化する流行相手の闘いにあって、「強み」に変化した。

 京都の西陣織などの伝統織物を使って作り上げた婦人靴「ジャポニカ」が、欧米で高い評価を得たのも、ものづくりへのこだわりの表れだろう。足元を彩るカラフルな靴が、世界へ向かって着実に歩み出している。

 こんな“元気の素(もと)”がいっぱい詰まった宝物が、県内にはたくさんある。ひとづくり、まちづくり、ものづくり。外から助っ人を呼ぼうと焦らず、まずはわが街を見渡そう。宝を光らせ、育てるのは知恵と才覚次第―。

記事・加藤正文
写真・宮路博志

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