「球界の黒子」から新たな挑戦 関西独立Ｌのコーチに　

日本代表のスコアラーから転身した明石の山本重政コーチ＝加古川市、野口球場

　日本代表の「黒子」だった男が新たな舞台に挑んでいる。野球の関西独立リーグ明石の山本重政投手コーチ（６４）。阪神のスコアラーとして３０年近くチームを支え、昨年の北京五輪では日本代表の星野仙一監督に請われ、ライバル国の偵察を担当した。久々にグラウンドに復帰した山本コーチは「世界を一周して各国の野球を見た。勉強したことを選手に教えたい」と話す。

　社高出身。立命大を中退し、１９６２年近鉄入り。６９年に阪神に移籍し、プロ１５年で通算４０勝。現役引退後、阪神２軍コーチを経てフロント入りし、スコアラーとなった。その経験と手腕を買われて昨年、「星野ジャパン」入りした。

　相手チームのデータを収集し、選手の特徴から監督の戦術まで詳細に分析するスコアラー。水面下で働くため、球界では「００７」と呼ばれ、時にチームの勝敗を左右する。五輪で重責を担った山本コーチはワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）でも引き続き要請される可能性があった。しかし、「６０歳を過ぎてユニホームを着て野球をやりたくなった」と、近鉄時代の同僚だった北川公一監督の誘いに乗った。

　リーグ開幕に向け、投手陣とともに汗を流す日々。冷徹な視点が求められたスコアラー時代とは違い、「一生懸命にやっている選手の姿に気持ちが高まる」と穏やかに笑う。「今のままではもう一つ上には行けない。ただ一皮むければ分からない。それが楽しみ」。卓越した眼力で夢を追う若者を鼓舞する。（松本大輔）

(2/20 09:54)