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関西独立リーグの挑戦 「年俸180万円」の勇者
(上)西川徹哉投手(神戸)元逸材≠ツないだ情熱
練習試合の2戦目で先発し、好投した神戸の西川徹哉投手=淡路市、淡路佐野球場 |
野球の関西独立リーグが27日、開幕する。選手の給与は月額20万円。9カ月間契約で年俸は180万円。「プロ」とはいえ、NPB(日本プロ野球組織)の一流プレーヤーに比べれば、待遇は100分の1にも満たない。それでも、夢と希望を胸に懸命に白球を追う。地元兵庫の球団で活躍が期待される選手たちにスポットを当てた。
「生活? そりゃ苦しいですよ。都会にいれば、欲しいモノも出てくるし」。神戸9(ナイン)クルーズの右腕、西川徹哉(21)は「年収180万円」の日常をそう語る。ただ、額面通りの言葉でもない。むしろ、現実を受け入れている。西川は打ち明ける。「僕は一度、挫折してますから」
3年前の春、西川は野球を投げ出した。京都・鳥羽高から九州の強豪大学に進んだが、入学前のキャンプで退部した。厳しい上下関係になじめず、ハードな練習にも嫌気が差した。入学式にすら出席せず、荷物をまとめて京都に帰った。
西川自身に未練はなかった。「高校までやったし、もういいかなと。1年間勉強して大学か専門学校に行くつもりだった」。だが、周囲は許してくれなかった。「辞めるなんてもったいない」。誰もが口をそろえた。 西川の意に反し、少年野球時代の恩師らが取り計らい、当時発足2年目だった四国アイランドリーグ(IL)の高知に押し込められた。「そんな状態だったから、何度も辞めようと思った。でもここも辞めたら、人生終わるなと。この先、何も続かないなと」。かすかな良心で西川は耐えた。
もともとは京都の公立の雄でエースを張った逸材。程なく本領を発揮した。2年目に頭角を現し、3年目の昨季は17勝でリーグ最多勝に輝いた。実績を引っ提げ、今季から神戸に移籍。関西独立リーグでNPBに最も近い投手の一人に挙がる。
西川は穏やかに言う。「我慢が必要なときもある。大切なのは『続けること』だと思う」。21歳。大学生なら4年生の春。振り返れば、決して「回り道」ではなかった。
(松本大輔)
(2009/03/18)
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